制度の歴史

こどもNISAは改悪される?ジュニアNISAの前例で確かめる

こどもNISAのルールがこの先どう変わるかは、まだわかりません。判断の材料になるのが、2023年末に新規の口座開設が終了したジュニアNISAと、過去のNISAの変更です。すでに投資した分の扱いを、金融庁の統計と国税庁・財務省の資料で確かめました。

マリ

こどもNISA、あとで政府が改悪したりしないかな?

ユキさん

ずっと変えないという約束は、国もしていません。ただ、前のジュニアNISAは、持っていた人が損をしない形で終わりました。

マリ

前のジュニアNISAは、どんなふうに終わったの?

ユキさん

新しい口座の受付は終わりましたが、すでに投資した分は、税金がかからないまま残りました。

この記事でわかること

  • 既存分へのさかのぼり課税は見当たらない
  • ジュニアNISAは利用が少なく2023年末で終了
  • 制度の変更は12月の大綱で先に示されてきた
目次

こどもNISAのルールがこの先も変わらないと、国が約束した文書はありません。ただ、NISAのこれまでの変更で、すでに投資した分にさかのぼって税金をかけた例は、金融庁・国税庁の資料には見当たりません。子ども向けの前例であるジュニアNISAも、2023年末で新しい口座の開設が終了したあと、すでに投資した分は18歳まで非課税(増えた分に税金がかからないこと)のまま保有でき、2024年からは全額なら年齢や理由に関係なく、税金なしで引き出せるようになりました。

NISAは、投資で増えたお金に税金がかからないようにする国の制度です。こどもNISAは、2027年1月に始まる、0〜17歳の子どもの名前で使うNISAです。この記事でいう「改悪」は、使う人に不利な方向へルールが変わることを指します。

ジュニアNISA こどもNISA 2016年 2019年12月 2023年末 2024年〜 2025年12月 2026年3月 2027年1月 ジュニアNISAが始まる 「延長しない」と決まる 新しい口座開設が終わる 全額なら非課税で引き出せる 大綱でこどもNISAが決まる 法律が公布される こどもNISAが始まる 年80万円・合計400万円。株も買えた 利用が少なかったため 年齢や理由は問わない 置いておけば18歳まで非課税 年60万円・合計600万円
ジュニアNISAの始まりから、こどもNISAの開始まで(国税庁、金融庁、財務省の資料をもとに作成)

ジュニアNISAはなぜ終わった?利用が少なく、2023年末で新規の口座開設が終了

ジュニアNISAは2016年に始まった子ども向けのNISAで、年80万円・合計400万円まで、投資信託(運用会社が集めたお金で株などに投資する商品)に加えて、会社の株も買えました。高校3年生の1月より前は、災害などのやむを得ない事情を除いて引き出せず、ルールに反して引き出すと過去の利益に税金がかかりました。

ジュニアNISA 2016〜2023年 こどもNISA 2027年〜 1年の上限1年の上限 合計の上限合計の上限 買えるもの買えるもの 引き出し引き出し 80万円60万円 400万円600万円 上場株式も買えた 投資信託の積立だけ 高3の1月まで 小6の1月から 原則、引き出せない 教育費・生活費なら可
ジュニアNISAとこどもNISAのちがい(国税庁タックスアンサーNo.1535、財務省「ジュニアNISAの概要」「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」をもとに作成)

国がこの制度を終えた理由は、「利用実績が乏しい」ことでした。2019年12月の税制改正大綱(令和2年度)で「利用実績が乏しいことから延長せず」とされました。税制改正大綱は、翌年度からの税金のルールの変え方を、国が毎年12月にまとめた方針です。このとき、新しい口座開設は2023年までと決まりました。

2016年末の口座数(金融庁の調査) 大人のNISA(一般NISA等) 10,613,172 ジュニアNISA 194,579 約55分の1 ※棒の長さは口座数に比例 ジュニアNISAの中身(2016年の買い付け) 1円も買わなかった 買った 125,686口座(6割あまり)が空のまま 2019年12月「利用実績が乏しい」 延長せず、2023年末で新しい口座開設が終了
2016年末の口座数。棒の長さは口座数に比例しています(金融庁「NISA口座の利用状況調査」、令和2年度税制改正大綱の概要をもとに作成)

制度が始まった2016年の年末時点で、ジュニアNISAの口座数は194,579でした。同じ時期の大人のNISA(一般NISA等)は10,613,172口座あったので、55分の1ほどです。しかも、そのうち125,686口座は、その年に1円も投資信託や株を購入していませんでした。口座の6割あまりは、その年に投資のなかった空の口座でした。

ジュニアNISAの口座数(各年12月末)

年末 口座数
2016年 194,579
2018年 312,467
2020年 454,453
2023年 1,238,943

2023年末の残高は約1兆2,941億円。2023年中に購入のなかった口座は416,180でした。

終了が決まったあとも、口座数は増え続けました。終了が決まった翌年の2020年末に約45万だった口座は、2023年末には約124万と、3年で2.7倍ほどになっています。2016年から2023年までに購入された額は、合計で約1兆2,572億円でした。2023年末の残高を口座数でならすと、1口座あたり約104万円です。一方で、2023年に購入のない口座が集計対象の3分の1ほどありました。

ジュニアNISAを延長しないと決めたとき、国が理由に挙げたのは、こうした利用の実績でした。制度がどれだけ使われているかが、続けるかどうかを決める材料になった前例です。

制度が終了しても、すでに投資した分の非課税が取り消されることはありませんでした。今もジュニアNISAを保有している場合の引き出しの手続きと、置いておいたときの18歳の年の扱いは、次の記事にまとめています。

あわせて読みたいジュニアNISAの引き出し方は?手続きと18歳になったらどうなるか

他のNISAが変わったときも、すでに投資した分の非課税は続いた

すでに投資した分の非課税が続いたのは、ジュニアNISAだけではありません。2023年末には、大人向けの一般NISAとつみたてNISAも終了し、2024年から今のNISAに切り替わりました。このときも購入済みの商品は売らずに保有でき、非課税の期間は旧制度のままです(つみたてNISAは買った年から20年、一般NISAは5年)。旧制度の分は、新しいNISAの1,800万円とは別枠で扱われます。非課税の期間が終わるまでに売るか、終わったあと、税金がかかる普通の口座へ移すかを選ぶ形です。

2023年末に終了したNISA、投資した分は? つみたてNISA 一般NISA ジュニアNISA 非課税のまま保有できる 非課税のまま保有できる 非課税のまま保有できる 期間は買った年から20年 期間は買った年から5年 18歳まで。2024年からは 全額を非課税で引き出せる 上の2つは、新しいNISAの1,800万円とは別枠。 非課税のまま新しいNISAへは移せない すでに投資した分に、さかのぼって課税した例 金融庁・国税庁の資料には見当たらない
2023年末に終了したNISAで、すでに投資した分の扱い(金融庁「ジュニアNISAの概要」「令和5年度税制改正の概要」、国税庁タックスアンサーNo.1535をもとに作成)

使う人から見て不利になった点もあります。旧制度の商品を、非課税のまま新しいNISAへ移すこと(ロールオーバー)はできません。旧一般NISAでは、5年の非課税期間が終わる商品を翌年の枠へ移すロールオーバーができていたので、これは変わった点です。ジュニアNISAでも、5年の期間が終わる商品を翌年の枠へ移すときは、年80万円の上限を超えて移せました。ただ、移せないのは非課税期間が終わったあとの話で、保有している間の非課税が取り消されたわけではありません。

制度が終了したり作り直されたりしたとき、すでに投資した分にさかのぼって税金をかけた例は、金融庁・国税庁の資料には見当たりませんでした。むしろジュニアNISAは、終了してから引き出しの縛りがなくなり、利用していた人に有利な方向へ変わっています。

「さかのぼって課税」と混同しやすいルール

ジュニアNISAにもこどもNISAにも、ルールに反して引き出すと、過去の利益に税金がかかる仕組みがあります。これはあとから変えられたものではなく、最初から決まっている条件です。こどもNISAでは、高校3年生の1月より前にルールに反して引き出したり、口座を解約したりすると、それまでの利益に税金がかかります。

「課税」の話は、2つに分けて考える さかのぼり課税 ルール違反で課税 あとから制度を変えて 持っていた分に課税 最初から決まって いる条件 NISAでの例 こどもNISAでは 確認した範囲では 見当たらない 高3の1月より前に ルールに反して 引き出す・口座を解約する それまでの利益に課税
「さかのぼり課税」と「ルール違反の払い出しでの課税」のちがい(金融庁「ジュニアNISAの概要」、財務省「所得税法等の一部を改正する法律案要綱」をもとに作成)

こどもNISAは変わらない?変更は12月の大綱で先に示されてきた

こどもNISAのルールがこの先も変わらないという保証はありません。さかのぼり課税の例がなかったのは過去の話で、この先も同じだと国が示した文書は見つかりません。NISAは、2016年のジュニアNISAの開始、2019年の見直しの決定、2022年の作り直し、2025年12月の大綱で決まったこどもNISAと、10年ほどの間に何度も税制改正で形を変えてきました。

変更は、先に12月の「大綱」で知らされた 2019年12月 2022年12月 2025年12月 2023年末 2024年から 2027年1月 税制改正の大綱 税制改正の大綱 税制改正の大綱 ジュニアNISAの新規終了 今のNISAに切り替え こどもNISAが始まる 法律の公布は2026年3月31日 どれも、実際に変わったのは1年以上あと ただし、この先も同じとは言い切れない 「変えない」と国が示した文書は見つからない 同じ形なら、影響は主にこれから投資するお金
NISAの変更は、12月の税制改正の大綱で先に示されてきた(金融庁・財務省の資料をもとに作成)

2019年・2022年・2025年の変更は、どれも12月に出た税制改正の大綱で方向が示され、実際に制度が変わったのは1年以上あとでした。こどもNISAも、2025年12月の大綱のあと、2026年3月31日に法律として公布(正式に発表)されています。これまでの変更は突然行われたわけではなく、事前に大綱で示されてきました。

2019年に決まった「2階建て」案は、始まる予定だった2024年より前の2022年に、今のNISAの形へ置き換えられました。実施される前に変わったので、この案のもとで投資した人はいません。制度の中身が変わっても、始まる前の変更なら、すでに投資したお金には影響しなかった例です。

過去と同じ扱いが続くなら、ルールが変わって影響を受けるのは、主にこれから投資するお金です。

こどもNISAには、引き出しの書類の様式など、まだ決まっていない細かい点もあります(こどもNISAってなに?)。

過去の変更では、すでに投資した分の非課税は守られてきた

ジュニアNISAは利用が少ないまま終了しましたが、利用していた人は2024年から全額を非課税で引き出せるようになりました。NISAの変更で、すでに投資した分の非課税が取り消された例は、金融庁・国税庁の資料には見当たりません。これまでの変更は、どれも12月の税制改正の大綱で先に示されてきました。

この記事の要点 123 投資した分は2024年から全額を非課税で ジュニアNISAは2023年末で終了 さかのぼり課税の例は見当たらない 引き出せる。置いておけば18歳まで非課税 利用が少なく、新規の口座開設が終了した 金融庁・国税庁の資料で。将来の約束ではない 変更は12月の大綱で先に示されてきた

あわせて読みたいこどもNISAとは?いつから始まる?大人のNISAとの違いと注意点

あわせて読みたいこどもNISAの口座はどこがいい?証券会社の選び方と変更できるか

よくある質問

QこどもNISAが改悪される心配はある?

国が「この先も変えない」と約束した文書はないので、変わらないとは言い切れません。ただ、これまでのNISAの変更で、すでに投資した分にさかのぼって課税した例は、金融庁・国税庁の資料には見当たりません。変更はいつも12月の税制改正の大綱で先に示され、実際に変わったのは1年以上あとでした。

QジュニアNISAはどうなった?

利用実績が乏しいとして延長されず、2023年末で新しい口座開設が終了しました。すでに投資した分は18歳まで非課税のまま保有でき、2024年からは、全額なら年齢や理由に関係なく非課税で引き出せます。

QジュニアNISAのお金は今引き出せる?

2024年からは、全額なら年齢や理由に関係なく非課税で引き出せます(一部だけは引き出せません)。手続きや、置いておいた場合の18歳の年の扱い、こどもNISAへ移せないことは、ジュニアNISAの引き出し方は?の記事にまとめました。

QNISAの制度が変わるときは、いつわかる?

これまでの変更は、12月に出る税制改正の大綱で方向が示され、実際に制度が変わったのは1年以上あとでした。こどもNISAも、2025年12月の大綱のあと、2026年3月31日に法律が公布されています。

参考にした資料

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