しくみ

国はなぜNISAやこどもNISAを作った?「貯蓄から投資へ」の目的

国の資料は、NISAのねらいを「貯蓄から投資へ」と書いています。ただ、国の制度だからといって、投資したお金が減らないわけではありません。政府の資産所得倍増プラン、金融庁の資料、日本銀行の統計を読み、書かれている目的だけをまとめました。

マリ

国はどうして、NISAやこどもNISAを作ったのかな?

ユキさん

預金に置いたままのお金を、投資にも回してもらうためです。増えた分に税金をかけないことで、投資を始めやすくしています。

マリ

国がすすめる制度なら、損はしないのかな?

ユキさん

そこは違います。国が作った制度でも、投資したお金が減ることはあります。

この記事でわかること

  • 国がNISAを作った目的と「貯蓄から投資へ」
  • こどもNISAが作られた理由と、ジュニアNISAとの違い
  • 国の制度でも、元本は保証されないこと
目次

こどもNISAは、この仕組みを0〜17歳の子どもにも広げたもので、2027年1月に始まります。国はその目的を、大学進学など大人になってから要るお金を、長い投資で用意できるようにするため、と説明しています。

国がNISAを作り、広げてきたのは、預金にあるお金を投資にも回してもらうため

国がNISAで目指す流れ 家計の預金 投資信託や株に投資する 会社の成長の元手になる 配当や値上がりが家計に戻る 日本の家計のお金の47.2% 少しずつ、長く、分けて 会社の価値が上がれば 給料に加えて、資産所得も NISA:増えた分に税金がかからない 国はこの流れを「成長と資産所得の好循環」と呼ぶ ※値下がりすることもあり、元本保証はありません
国のねらいを1枚で。家計の預金を投資にも回してもらい、会社の成長を通じて、配当や値上がりの形で家計に戻る流れを目指しています(資産所得倍増プラン、日本銀行「資金循環の日米欧比較」2026年3月末をもとに作成)

国の資料は、NISAのねらいを「貯蓄から投資へ」と書いています。NISAは2014年1月に、少額から投資する人のための制度として始まりました。イギリスのISAという、税金のかからない貯蓄・投資の口座を手本にしています。2017年の金融庁の有識者の報告書は、NISAを「家計の安定的な資産形成を支援するための制度」と位置づけていました。

2022年11月、政府は「資産所得倍増プラン」を決めました。資産所得は、給料とは別に、預金の利息や投資の配当・値上がりから得る収入のことです。プランは、「家計に眠る現預金を投資につなげ」、給料に加えて資産所得も増やすことを基本の考え方に置いています。

プランには、お金がどう回るかも書かれています。家計のお金が投資を通じて会社の成長の元手になります。会社の価値が上がれば、配当や値上がりとして家計に戻ります。国はこの流れを「成長と資産所得の好循環」と呼んでいます。

7本の柱の1本目に置かれたのが、「家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化」です。目標には、5年間でNISAの口座数を1,700万から3,400万に、NISAで買った額を28兆円から56兆円に、それぞれ倍にすることを掲げました。

NISAは、税金の面から投資を後押しする制度です。投資で得た利益には、ふつう約20%の税金がかかります。NISAの口座で投資した分は、売って得た利益にも、投資信託が配る分配金にも、税金がかかりません。

投資をしたことがない人が投資をしない理由も、プランは金融庁の調査から引いています。いちばん多いのは「余裕資金がないから」の56.7%で、次が「知識がないから」の40.4%でした。そこでプランは、使いやすい制度にすることと、100円〜1,000円の少額でも投資できることを大事だとしています。

日本の家計のお金は、半分近くが預金にある

家計のお金の置き場所(2026年3月末) 日本(2,386兆円) 47.2% 23.6% 24.5% 米国(141.6兆ドル) 56.7% 25.7% 現金・預金 株式等・投資信託 保険・年金など 債券・その他 ※棒の長さは割合に比例。ユーロ圏の現金・預金は31.1% ※日本の債券・その他は4.7%、米国は6.8% 10.7%
家計の金融資産の置き場所。日本は47.2%が現金・預金、米国は10.7%。株式等と投資信託を合わせると、日本は23.6%、米国は56.7%です(日本銀行「資金循環の日米欧比較」2026年3月末をもとに作成)

日本銀行の統計では、2026年3月末の日本の家計の金融資産2,386兆円のうち、47.2%が現金・預金です。株式などは16.7%、投資信託は6.9%で、合わせると23.6%になります。投資信託は、たくさんの人から集めたお金をまとめて、運用会社が多くの会社の株などに分けて投資する商品です。

米国は反対の形です。現金・預金は10.7%で、株式などが43.4%、投資信託が13.3%、合わせて56.7%でした。ユーロ圏は、現金・預金が31.1%です。2022年のプランの時点では、日本の家計のお金は「半分以上」が預金でした。2026年3月末の数字では、半分を少し下回っています。

お金の増え方にも差がありました。2022年のプランが引いた数字では、それまでの20年間で、米国の家計の金融資産は3.4倍、英国は2.3倍になり、日本は1.4倍でした。プランは、この差の背景に投資のしやすさの違いがある、としています。

つみたてNISAができる前の2017年、金融庁の有識者の報告書は、預金を「元本保証があり安全性が高い一方、低金利下では得られるリターンはごくわずか」と書いていました。元本保証は、預けた額そのものは減らないことです。

長生きになったことも、国の資料に出てきます。金融庁のNISAの案内は「人生100年時代。資産形成の重要性が増しています」と書き、長寿化が進んで、お金が必要になる時期も額も人それぞれになったと説明しています。

つみたてNISAと新しいNISAは、少しずつ、長く投資してもらうための仕組み

2014年1月 2016年 2018年1月 2022年11月 2024年1月 2027年1月 NISAが始まる ジュニアNISAが始まる つみたてNISAが始まる 資産所得倍増プラン 新しいNISAが始まる こどもNISAが始まる 英国のISAが手本 2023年末で新規の口座開設が終了 少額から、長く、積み立てて 「貯蓄から投資へ」を掲げる 非課税の期間が無期限に 0〜17歳・年60万円まで
NISAの年表。2014年にNISA、2016年にジュニアNISA、2018年につみたてNISAが始まり、2022年11月に政府が資産所得倍増プランを決めました。2024年に新しいNISA、2027年1月にこどもNISAが始まります(金融庁 NISA特設ウェブサイト、資産所得倍増プラン、財務省の法律案要綱をもとに作成)

2018年のつみたてNISAは、少しずつ、長く、分けて投資する人を増やすために作られました。2017年の金融庁の資料では、当時のNISAで積立に使われている口座は全体の1割以下で、一度も買っていない口座が半分以上ありました。国は「家計による少額からの長期・積立・分散投資を税制面から促進」するとして、つみたてNISAを作り、買えるものも長く積み立てるのに向く投資信託に限りました。

長期・積立・分散は、国の資料にくり返し出てくる言葉です。同じ額を毎月など続けて買い、国や資産の種類を分けて、長く持ち続けることを指します。

2024年1月には、2022年12月の税制改正で決まった新しいNISAが始まりました。1年に最大360万円、生涯で1,800万円まで、税金をかけずに投資できます。非課税で持てる期間は無期限になり、制度そのものにも終わりの年がなくなりました。

期限をなくした理由は、プランに書かれています。制度に終わりがあると、それが気になって長い投資がしにくいという声がありました。つみたてNISAの20年の期限は、20〜30歳代で始めた人には、まだ資産を育てている40〜50歳代で来てしまいます。期限をなくしたのは、途中で売らずに長く持ち続けてもらうためです。

こどもNISAは、大学進学など大人になってからのお金に備えるため

ジュニアNISA こどもNISA 引き出し引き出し 非課税の期間非課税の期間 原則18歳まで 引き出せない 小6の1月からは、 子どものために使い 子の同意があれば可 5年。続けるには 移す手続きが必要 無期限。18歳の年から 大人のNISAへ 手続きなしで移る ※学年は目安。同意は書面で示し、親が申し出ます
こどもNISAで変わった2つの点。小学6年生の1月からは条件つきで引き出せる。非課税の期間は無期限で、18歳の年から手続きなしで大人のNISAへ移る(金融庁「アクセスFSA」2026年2月号、令和8年度税制改正の資料をもとに作成)

金融庁は、こどもNISAを作った目的を、子どもの世代の資産づくりを進め、大学進学など大人になってから要るお金を、長い投資で用意できるようにするためと説明しています。18歳以上しか使えなかったつみたて投資枠の年齢の条件をなくして、あらゆる世代が資産づくりをできるようにする、とも書いています。

こどもNISAでは、0〜17歳の子どもの名前で、年60万円・合計600万円まで、国が条件を決めた投資信託を積み立てられます。しくみはこどもNISAってなに?の記事にまとめました。

子ども向けのNISAは、これが2回目です。2016年に始まったジュニアNISAは、利用実績が乏しいとして延長されず、2023年末で新しい口座の開設が終わりました。口座数の推移と、すでに投資した分の扱いは、こどもNISAは改悪される?の記事にまとめました。

金融庁は、ジュニアNISAと違う点として2つを挙げています。1つ目は引き出しです。ジュニアNISAは原則18歳まで引き出せませんでした。こどもNISAは、小学6年生の1月からは、子どものために使うことと子どもの同意を書面で示せば、親が引き出せます。

2つ目は、非課税で持てる期間です。ジュニアNISAは5年で、非課税のまま持ち続けるには、次の年の枠へ移す手続き(ロールオーバー)が要りました。こどもNISAは期限がなく、18歳の年(その年1月1日に18歳である年)から、手続きなしで大人のつみたて投資枠へ移ります。金融庁は、こうした使いやすさで、より多くの人に使ってもらうことを期待しています。

国が作った制度でも、投資したお金が増えるとは限らない

この記事の要点 123 NISAは「貯蓄から投資へ」のため こどもNISAは大人になるころのお金に 国の制度でも、元本保証はない 預金にあるお金を、投資にも回してもらう 大学進学などに要るお金を、長い投資で 投資は当面使わない余裕のあるお金で
この記事の要点。国は預金から投資へお金を回してもらうためにNISAを作り、広げてきた。こどもNISAは大学進学など大人になってからのお金に備えるため。国の制度でも元本保証はなく、投資は当面使わない余裕のあるお金で(資産所得倍増プラン、金融庁の資料をもとに作成)

NISAもこどもNISAも、元本保証はありません。税金がかからないのは増えた分で、値下がりした分を国が埋める仕組みはありません。投資したお金より減ることを、元本割れといいます。株価指数(たくさんの会社の株価をまとめて1つの数字にしたもの)の過去の成績はこどもNISAで何を買える?の記事にまとめましたが、大きく下がった年もあり、どれも過去の実績で、将来を約束するものではありません。

2024年に閣議決定された国の方針も、預金は安全性が高い一方で増え方は株や投資信託に劣る場合が多く、株や投資信託は増えることが期待できる一方で元本割れのおそれもある、と書いています。そのうえで、生活のお金の土台は貯蓄だとして、投資は当面使わない余裕のあるお金で行うよう求めています。

こどもNISAの場合、子どもの口座に入れたお金は、小学6年生の12月まで原則として引き出せません。NISAもこどもNISAも、使うかどうか、いくら入れるかは、それぞれの家庭が決めます。

国がNISAを作り、広げてきたのは、預金の割合が大きい家計のお金を投資にも回し、長く資産を育ててもらうためです。こどもNISAは、大学進学などのお金を長い投資で用意できるように、その仕組みを0〜17歳に広げたものです。国の制度でも元本保証はなく、国の方針も、投資は当面使わない余裕のあるお金で行うよう求めています。

あわせて読みたいこどもNISAとは?いつから始まる?大人のNISAとの違いと注意点 あわせて読みたいこどもNISAは改悪される?ジュニアNISAの前例で確かめる

よくある質問

QNISAはなぜ国が作ったの?

NISAは2014年に、少額から投資する人のための制度として始まりました。2022年に政府が決めた「資産所得倍増プラン」は、家計のお金を「貯蓄から投資」へ移すためにNISAを大きく広げる、としています。投資で増えた分に税金をかけないことで、投資を始めやすくしています。

Q「貯蓄から投資へ」とはどういう意味?

預金に置いているお金の一部を、株や投資信託への投資にも回してもらう、という国の方針です。日本銀行の統計では、2026年3月末の日本の家計の金融資産のうち47.2%が現金・預金で、米国の10.7%より大きな割合です。

QこどもNISAは何のために作られた?

金融庁は、子どもの世代の資産づくりを進め、大学進学など大人になってから要るお金を、長い投資で用意できるようにするため、と説明しています。2023年末で新規の口座開設が終わったジュニアNISAと比べて、小学6年生の1月から条件つきで引き出せる、18歳の年から手続きなしで大人のNISAへ移る、といった点が変わりました。

Q国がすすめるNISAなら、損はしない?

損をすることはあります。NISAで税金がかからないのは増えた分で、値下がりした分を国が埋める仕組みはありません。国の方針も、投資信託や株には元本割れのおそれがあるとしています。

積立の計算

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18歳でいくらになる?かんたん計算

30,000円
1年あたりの増え方(仮定)

入れたお金

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18歳のときの目安

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増えた分

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2027年1月から始めて、18歳になるまで毎月積み立てた場合の単純な計算です(2027年1月の年齢は、いまの年齢に半年を足して計算。「2027年以降に生まれる」は、生まれた月から216か月積み立てた場合。毎月複利、手数料は入れていません)。こどもNISAの上限(年60万円・合計600万円)を超える分は入れていません。増えた分は、こどもNISAの中なら税金がかかりません。実際の運用成果は相場によって上下し、元本割れすることもあります。大学の学費は、入学料・授業料・施設設備費の4年分です(国立は省令の標準額、私立は文部科学省の令和7年度入学者の平均。下宿は日本政策金融公庫の2021年の調査)。受験料・通学費・教科書代は入っていません。くわしくは教育費はいくら?の記事にまとめています。

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